地球侵略を企むナーワー帝国の本拠地、幻縛城。その作戦室とも言えるナーワーの間に、ナーワー帝国三大幹部の内の二人、リュウ元帥とドクターb.b.が集まっていた。じっと無言で佇むドクターb.b.に対し、リュウ元帥は落ち着きが無く、腕を組んでその場を何度も行ったり来たりしている。その二人の正面に、壁と一体化した巨大な石像が聳え立っている。言うまでも無く、魔王ナーワーである。この石像が彼の本体なのか?それとも仮の体であるのか?それは三大幹部のみが知るトップシークレットなのだ。
「ええい!何をやっておるのだミキはっ!...定刻はとうに過ぎているぞっ!」
しびれを切らしたリュウ元帥が、遂に叫び声を上げる。彼らは次の地球侵略計画を練る為、この部屋に集まっていた。だが、もう一人の幹部コマンダー・ミキが、定刻をだいぶ過ぎても全く姿を見せないのだ。
「.....大分お怒りの様ですね.....リュウ元帥........」
「ん?!...........」
その時、何処からともなく部屋全体に声が響き渡った。だが、声はすれど、声の主の姿は何処にも無かった.......
「?.......こ....この声は?......」
「.....プロフェッサーちょこるか?.....」
ドクターb.b.が、即座に声の主を言い当てた。
「......ご名答!!.......」
すると、部屋の隅にうっすらと白い影が浮かびあがった。最初はホログラムの映像の様な透けた姿であったが、徐々にくっきりとした人の姿に実体化して行く。まだ16〜17歳程度の幼い顔立ちの美少年で、体全体を黒いマントで覆い隠している。この容姿は彼の持つバイオテクノロジーの賜物であり、実際の年齢はとうに百歳を超えていた。
「お久しぶりでございます、魔王ナーワー様.....」
「また貴様かっ!.....今度は一体何の用だっ?!」
いきなり怒鳴り付けるリュウ元帥。古い付き合いのドクターb.b.と違って、彼は得体の知れないプロフェッサーちょこるを嫌っている様だ。だが、ちょこるはそんなリュウの苛立ちも逆に楽しんでいるかの様にうすら笑みを浮かべ、ゆっくりと部屋の中央に歩み寄って来る。そして、魔王ナーワーの正面に立って一礼をする。
「....実は、面白い実験体ができましたので...是非ご覧頂きたいと思い持参しました.....」
「....実験体?」
首をひねるリュウ。
「......これです.......」
ちょこるは、マントの中から握った左手を差し出し、ナーワーの目の前でそれをゆっくり開いた。
「.....?!......」
そこには、小さな一匹の蜘蛛が乗っていた。
【第19話】 狙われたファンタジー・ベース ― Act.1 ―
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