「何だ!ただの蜘蛛ではないか!.....これのどこが面白いのだ!」
またも罵声を浴びせるリュウ、しかし、ドクターは真剣にその蜘蛛を見詰めていた。
「....この蜘蛛が.....どんな力を持っているのだ?....」
「ふふっ.....流石はドクター、ひと目でこれがただの蜘蛛では無い事が分った様ですね....」
そう言って、うすら笑みを浮かべながら、横目でリュウを見るちょこる。リュウは、ムッとして顔をしかめて横を向いてしまう。
「この蜘蛛自体は、普通の蜘蛛と大差はありません.....ただ、普通の蜘蛛の何百倍の量の糸を噴く事が出来ます。そして、その糸がまた特殊で.......」
そこまで言って、ちょこるは言葉を止めてしまう。
「.....どうした?先を言わんか....」
「....実際に、その目でご覧になった方がよろしいかと.....」
「ん?.....ここで、その糸を噴かせるのか?」
「いいえ......既に、実演を行って参りました....皆さん、誰かをお待ちではなかったですか?」
「ん?.....ま....まさか、コマンダー・ミキを?」
「....はい!.....申し訳ありませんが、実験台になって頂きました!」
嬉しそうに語るちょこる。ドクターは“またか”という様な渋い表情を見せた後、右手の杖を頭上に翳す。すると、対面の壁がスクリーンの様に、ある部屋の様子を映し出す。当然、それはコマンダー・ミキの部屋であった。

「んっ!......んふっ!...はあんっ!.....あん!あんっ!!」
ミキは、不自由な体をくねらせながら、懸命にもがいていた。両手は後ろ手高手小手にきつく捩じ上げられ、胸の上下と一緒に厳しく縛り上げられている。同様に、膝と足首も厳しく縛られていて、床に横たわっている。ただ、彼女を縛り上げているのは縄では無く、非常に細い白い糸であった。その糸が何重に重なり、一本の白い縄の様に見せている。その束は何重に重なっているとはいっても決して太くは無く、直径で2〜3mm程度しかなかった。だが、とてつもなく強固であり、ミキがどんなに足掻いても全くビクともしなかった。
「あん!な...なんなの?この糸.....んんっ!だめっ!切れないわっ!」
糸は切れないばかりか、縄抜けもできなかった。それ自体が粘着性もある為、彼女の体にぴったりと張り付いている。そして何重にも重なった糸がそれぞれ張り付いている為、結び目の様な物は無く緩む事はあり得ない。それ故、自力で解く事はほぼ100%不可能であった。
「はあん!み...ミキさまあっ!.....」
ミキの目の前には、ミキと同じ様に糸で厳しく縛り上げられたサトミが転がっていた。いや、サトミだけでは無い。この部屋には更に9人の女性が不思議な蜘蛛の糸によって縛り上げられていた。いわずもがな、コマンダー・ミキ親衛隊の女戦士達である。
「あはあんっ!....んっ!.....ふうんっ!」
「あん!....んふっ!......はんっ!」
皆、懸命に縛られた体をくねらせてもがいているが、この蜘蛛の糸からは逃れる術は無かった。良く見ると、部屋のあちこちに大きな蜘蛛の巣が張ってある。
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