ファンタジーベースに、ME指令を尋ねて一人の少女がやって来た。MEと同じ村の出身で、今は東京の大学に通っている、桜という少女であった。MEとは倍近く年が離れているが、彼が大学生の時、帰郷した際にはいつも遊んであげていた。桜も、MEを兄のように慕っていた。
応接室のソファーに腰掛け、待っている桜の前に、ゆうかが麦茶を持って来る。
「あ、ありがとうございます。」
「桜さんって、おいくつ?」
「18です。」
「館長とは、どんなご関係なの?」
「あたしが小さい頃、いつもME兄ちゃんに遊んでもらったんです。あたし一人っ子だったから、本当のお兄ちゃんみたいに思ってました。」
「ふーん。そうなんだ.....変な事、教えられなかった?」
「え?!.....な、何ですか?」
「たとえば、しば...」
そこまで言いかけた時、応接室にMEが入って来た。
「ごめん、ごめん。待ったかい、桜?」
「ううん。ゆうかさんが話し相手になってくれたから。」
「そうか...ありがとう、ゆうか。」
「い..いえ、じ..じゃあ、あたしはこれで失礼します。」
ゆうかは、気まずそうにそそくさと部屋を出て行く。MEは桜の向かいのソファーに腰掛ける。
「で、今日はどうしたんだ?」
「うん。実はね、先週実家に帰った時、蔵の中でこんな物見つけたの。」
桜は、鞄から包みを取り出し、テーブルの上で開く。そこには、紫色に美しく輝く石が入っていた。それは、ゆうか達がペンダントにして身に付けている、しばられ人の残した石と同じ物であった。
「こ..これは?!」
「ね!...お兄ちゃんの家の蔵で見つかったのと、同じ物でしょ?」
「ほ..他には、何かなかったのか?古文書の類とか...」
「うん..これ以外は...それに、あたしじゃあんまり重い物は動かせなかったから....」
「そうか....いや、ありがとう....せっかく来たんだ。今日は泊まっていきなさい。」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん!」
ファンタジーベースは、普段は未来科学館を装っている。月に一度だけだが、一般公開もしており、ゆうか達はその時はコンパニオンとして活躍している。当然、指令室やゆうか達のトレーニングルーム兼お仕置き部屋は、立ち入り禁止区域である。
【第8話】 誕生!シバラレバイオレット