桜は関心して、シバラレクイーンの前で数分佇んでいた。
(やっぱりお兄ちゃん、あたしに隠して何か大変な事をやってるんだわ!)
桜は前々から、MEの態度に秘密めいた物を感じていた。今回紫色の石が見つかったのを口実に、最初からこっそりその秘密を探るつもりで、彼女はファンタジーベースを訪れたのだ。
桜は、次に司令室にたどり着く。机の上には、先程桜がMEに渡した紫色の石が置かれている。壁の棚には、ディスクがぎっしり詰込まれている。桜は、メインコンピュータの電源を入れる。だが、パスワードを入力しないと立ちあがらない。しかし、ものの数分で桜はパスワードを見つけ出し、立ち上げに成功する。末恐ろしい娘である。
ME指令は、全員をトレーニングルームに集めていた。何故、司令室ではなくトレーニングルームなのか?皆、疑問を抱えていた。リーダーのまゆみが、しびれを切らして問い掛ける。
「指令!NWカウンセリングは、やはりナーワー帝国だったんですか?」
「.....いや....関係なかった......」
相変わらず、低い声でMEは答える。
「え?!本当ですか?でも...それじゃ..」
「そんな事より、今から特訓を開始する!」
MEはまゆみの言葉を遮って、突然声のトーンを上げて話し出す。
「特訓?....なんで突然?」
「理由は追って話す!いいから、早く変身するんだ!」
ゆうか達は、訳が分からず、それでも言われた通り自縛装置を右手に持って、両手を背中で組む。皆一斉に、自縛装置のスイッチを押す。細い縄が後ろ手に組んだ彼女達の手首に絡みつき、全員後ろ手に縛り上げられる。
「シバラレ・チェンジ!」
ゆうか達の体を、激しい光が包み込み、ゆうか達はシバラレンジャーに変身する。しかし.....
「あっ!..あんっ!な..縄が解けていないわっ!」
本来なら、変身の光で飛び散るはずの縄が、飛び散るどころか、更に締め付けを増してゆうか達を厳しく後ろ手に縛り上げているのだ。
「そんな...ど..どうなってるの?ああんっ!」
「あんっ!指令!...な..なんとかして下さいっ!」
懸命にもがきながら、MEに助けを求めるゆうか達。しかし、MEは冷たい笑みを浮かべ、淡々と話し始める。
「さっき、自縛装置をすり替えておいた..その縄は、以前試作したお仕置用と同じ物だ!解けはせん!」
「え?!」
「な..何故そんな事をするんですか?あんっ!」
だが、MEは何も答えず、冷たく笑みを浮かべるだけだった。それを見て、ゆうかが喋り出す。
「ま..まさか...指令、ナーワーに操られているんじゃ?」
「え?!」
「NWカウンセリングから出てきてから...様子がおかしかったわ!」