「ええと?...何ていったっけな?....名刺を貰ったからそれを持ってくれば...おや?..いつの間にか、桜ちゃんがいないね。」
「え?!」
MEは、慌てて横を見る。さっきまで、確かに横に座って話を聞いていた桜の姿が、今は何処にも見当たらない。
「あ...あいつ、まさか?」
その頃桜は、5日前に最初の女の子が神隠しにあった滝の前まで来ていた。
「若い女の子ばかりさらうなんて、変質者か何かの仕業かしら?あたしが捕まえてとっちめてやるわ!」
桜は、しばられ人の子孫でシバラレンジャーに変身できる。犯人がただの変質者なら、あっという間に退治できるだろう。桜は、滝の周りをうろうろとしていた。
「犯人の狙いは、若い女の子。こんな若くて可愛い女の子が一人でいれば、直ぐに引っ掛かってくるわ!」
確かに桜は可愛いが、自分でそう口にするところは決して可愛くない。だが、うまい具合に犯人は桜の誘いに乗って来た。滝の側の森の中から、ガサゴソと音がした。
「だ..誰っ?!」
桜は、一応怯えた様な仕草をする。しかし、森の中から現れた者の姿には、さすがに桜も驚いてしまった。
「なっ......?!」
何と、そこには、桜と同じくらいの背丈のロボットが立っていた。ロボットといっても、MEの造るヒューマノイドの様な精巧な物ではなく、殆ど骨組だけの様な単純な物である。それでも、普通の女の子なら恐がって足が竦んでしまうだろう。だが、シバラレンジャーの桜の敵では無い。
「きゃああああああああっ!」
でもここは、桜は普通の女の子の様に振舞った。ロボットは桜の腕を取り、その手を背中にねじ上げた。
「あんっ!何するの!...た..助けてっ!誰かっ!」
更に、芝居を続ける桜。ロボットは、そんな事に気付く筈も無く、桜を後ろ手に縛り上げていく。
(さらわれた女の子達を助ける為に、ここはおとなしく捕まっておかなくっちゃっ!後ろ手に縛り上げられていれば、いつでも変身できるし...でも、こんなロボットを造るなんて、ただの変質者じゃ無いわね!)
「むんっ!..んっ!むむむむむんっ!」
ロボットは、今度は桜に猿轡を噛ませた。こんな人の少ない村では、少々大声を出しても中々人は来ないが、念の為である。そして、厳しく後ろ手に縛り上げた桜の縄尻を持って、桜の背中を押す。桜は、ロボットに森の奥へ連行されて行く。
(さあて、犯人の隠れ家へ案内してもらいましょうか?)
森の奥まで進んでいくと、切り立った崖の所に突き当たった。前は岩の壁で、先へは進めない。しかし、ロボットは前に進むよう桜をこづく。
「むん!むむむむんっ!」
”押されたって、これ以上進めないわよ!”と言いたかったが、猿轡の為言葉にならなかった。そうこうしている内に、ロボットは強い力で後ろから桜を押した。