「気を付けてね!」
華汝は、再び部屋を出て行こうとする。ところが.......
「あっ?!.....」
突然、脚に何かが絡まって動きが止まる。
「んっ!.......あんっ!」
更に、脚だけで無く上腕部にも何かが絡まり、バランスを崩して華汝はその場に倒れ込んでしまう。
「華汝っ?!......?!」
駆け寄ろうとするまゆみ、しかし、とっさに何かが飛んで来るのを察知して横に転がってこれを避ける。
「こ.....これは?!」
たった今まゆみが走り込もうとしていた位置に、大量の蜘蛛の糸が降り注いで来た。
「く....蜘蛛の.....糸?」
まゆみはすかさず、糸の飛んで来た方に顔を向ける。すると、壁の上方に一匹の小さな蜘蛛が佇んでいた。
「ま....まさか?.....あんな小さな蜘蛛が、こ...こんなに沢山の糸を?......」
「あん!.......まゆみっ!!」
まゆみは、今度は華汝の方へ向き直る。見ると、床に転がった華汝が懸命に体を捩りながらもがいている。華汝の体にはこの蜘蛛の糸が絡み付いていて、脚は足首と膝の部分に糸が絡み付き、一本の棒の様に縛られている。上半身は胸の上下に糸が掛かり、体と腕がぴったりくっ付いて固定されている。ただ、腕は真横に固定されているだけで後ろ手ではない。この状態なら、まだシバラレンジャーとしての力を発揮できる筈だが........
「な.....何なの?この糸?......ど....どんなに力を入れても.....切れない.....あんっ!」
糸は、普通の蜘蛛の糸と変わらない非常に細い物である。何重にか重なってはいるが、それでも直径は1mmにも満たない。それなのに、常人の10倍の力を持つシバラレンジャーが渾身の力を込めても、糸はびくともしないのだ。
「か....華汝っ!.....いま助けるわ!....レッド・マイティーソード!!」
まゆみは、マイティーソードを念出する。力で引きちぎれないなら、刃物で切り裂こうという考えだ。
「......?!」
そうしている間にも、蜘蛛は引っ切り無しに糸を噴いて来る。まゆみは巧みにこれを避けるが、目の前に格子状の蜘蛛の糸の壁ができてしまう。
「はああああああああっ!!」
まゆみは、マイティーソードでこの壁を断ち切ろうとする。が........
「きゃああああああああああっ!!」
糸は切れず、まゆみがマイティーソードを振り降ろした力で一瞬撓むだけ、そして次の瞬間、その反動がそのまま帰って来てまゆみは大きく後ろに跳ね飛ばされてしまう。
「あうっ!!」
まゆみは、背中から壁に叩き付けられる。その衝撃で、マイティーソードを落としてしまう。そこに、蜘蛛は容赦無く糸を噴き付ける。