投げ放たれたソーサーが、セットされた標的を悉く破壊して行く。そして、一回りして桜の所へ戻ってくる。それをキャッチして、一息付く桜。
「......ふう........」
桜は訓練の為、既にシバラレバイオレットに変身している。すると、急に桜の胸の水晶体が点滅を始めた。
「え?!......SOS信号?!......ま...まゆみさん達に何かあったの??」
シバラレンジャーは、後ろ手に縛り上げられてしまうとその力を失ってしまうが、そうなると自動的に、胸の水晶体が仲間に救助信号を送る。この事により、シバラレンジャー達は離れていても、仲間の危機は直ぐに察知できるのだ。
「と....とにかく、指令室に行かなくっちゃっ!!」
桜は、トレーニングルームの入口に向かって駆け出す。そうして、そのまま駆け抜けようとするが.....
「きゃんっ!!」
いつもは自動で開くドアが開かず、ドアにぶつかってしまう。
「え?!......ドアが故障したの?........」
桜は、ドアの横の制御パネルを開いて、手動に切り替えてドアを開けようとした。しかし、ドアは一向に開かない。それもその筈、実は、ドアの裏側が例の蜘蛛の糸で固定されてしまっていたのだ。
「へ....変ね?.....あっ!!」
その時、桜の背後から蜘蛛の糸が飛んで来て、桜の胸部と上腕部を縛り上げた。
「な....何?これ?.....あっ!....あんっ!」
戸惑っているところへ更に糸が飛んで来て、今度は膝と足首を縛り上げてしまう。
「あっ!.......あはんっ!」
急に脚を縛られた為桜はバランスを崩し、その場に倒れ込んでしまう。転んだ拍子に顔が丁度奥の壁の上部に向き、桜の視界に糸を放った主の姿が現れる。
「?!.....く...蜘蛛?!.....あ....あんな小さな蜘蛛が、...こ..この糸を??」
驚く桜、だが、そんな事よりまず縛られた体を何とかしなくてはいけない。幸いまだ後ろ手にはされていない、桜は渾身の力を込めて糸を引きちぎろうとする。
「うん!.....んっ......えいっ!.....んんっ!.....あんっ!」
が、当然の如く、桜がどんなに力を込めても糸は切れない。
「ああん!き....切れない?!....どうしてっ?ま...まだ力は封じられていない筈なのにっ!」
更に、激しくもがく桜。しかし、結果は同じであった。蜘蛛は、更に糸を噴出して来る。このままではまずいと思い、桜は別の行動に移る。
「ば...バイオレット.....そ...ソーサー!!」
上腕部を縛られていいるが、肘から下はまだ動く。それでも不自由な体勢ではあるが、何とかソーサーを投げ放つ事に成功する桜。ところが..........
「あん!.....そ.....そんなっ?!」
ソーサーは途中で糸に絡め取られ、勢いが止まってそのまま天井から吊り下げられた形になってしまう。
「ば....バイオレット・ソーサーでも切れないなんて....あんっ!」
蜘蛛はようやく糸を噴くの止め、壁を這って床に降り、今度は桜に近づいて来る。