カッターは糸を強く押しただけで、糸には切れ目ひとつ付かなかった。そして強く押し縮められた為に、その反動がそのままカッターに戻り、カッターは勢い良く跳ね返されて来た。胡摩は、やっとの思いでこれを交わした。
「か....カッターでも切れない.....」
「な....なんて糸なの?!...こ...こんな糸でもし縛られたら.....」
“とても逃げ出す事はできない”そう言い掛けて言葉に詰まるのりこ。救難信号が来ているという事は、既にゆうか達は縛られている。そしてこの現状を見れば、彼女達はこの糸で縛られているのは明白だ。
「く....蜘蛛型の幻縛獣なのかしら?.......」
たった二人だけで、幻縛獣相手に勝てるのか?そんな不安が、のりこと胡摩の頭をよぎる。しかし、まゆみ達4人は既に捕らわれの身、MEとさなえは近獏村に行っている。異変に気付いて引き返しているとしても、戻って来るのに半日以上は掛かる。それまで放っておく訳にはいかない、ここは二人で何とかするしかないのだ。
「と....とにかく、何とかして....な...中に入らなくっちゃっ!」
「で...でも、どうやって?.....この糸は、あたし達の力じゃ切れないわ!」
のりこは、少し考えてから答える。
「あ...荒っぽいけど、壁を壊しましょう!....壁の方なら、糸が掛かっていない部分もあるわ!」
「う...うん!.....分ったわ!」
胡摩は、再びイプシロンを走らせ、建物の周りを回り始める。
「?!.....胡摩っ!あそこっ!」
のりこが一点を指差す。そこの壁は、殆ど糸が掛かっていずに露出している。
「オッケー!....イプシロン・レーザー!」
胡摩は、壁に向かってレーザーを放つ。そして、楕円状にレーザーを動かし、トンネル型にくり抜く。くり抜かれた部分が轟音と共に建物内に倒れ、そこに丁度イプシロンが通り抜けられる程の穴が出来上がる。
「い...行くわよっ!のりこ!」
「いいわ!....行きましょう!」
スロットルを吹かし、胡摩とのりこは蜘蛛の巣だらけのファンタジー・ベース内に突入して行く.....

胡摩とのりこは、既に敵の巣窟と化してしまったファンタジー・ベースに、たった二人で果敢にも飛び込んで行った。しかし、ゆうか達をいとも簡単に捕らえてしまった敵に、討ち勝つ事ができるのであろうか?.....そして、縛られたゆうか達を助けられるのか?.....それとも、同じ様に縛り上げられてしまうのか?.........

                             ( つづく )
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