上を見て、のりこは驚く。そこには、何処にでもいる様な小さな蜘蛛が一匹居るだけだった。その蜘蛛が、自分に向かって糸を噴き出して来るのだ。
「...きゃっ!!...」
のりこは転がりながら、やっとの思いでそれを交わす。
「あん!....のりこっ!......んっ.....んんっ!!」
胡摩は、何とか糸を切ろうと腕と脚に力を込める。まだ後ろ手では無いのでシバラレンジャーとしての力は使える。が、まゆみ達同様、どんなに力を込め様が蜘蛛の糸は全く切れなかった。
「あん!....だ...だめっ!!」
一方のりこは、盛んに噴き付けられる糸を避けながら、何とか反撃を試みる。
「ホワイト!百烈拳!!」
しかし、動きが素早く、標的も小さく、その上糸を避けながらなので攻撃が当らない。相手は掌よりも小さな蜘蛛である。ほんの一発でもヒットすれば、一撃で粉砕できる。だが、その一撃が当らないのだ。狭い通路の為、動きもかなり制限されていた。
「こ...ここじゃだめっ!.....も...もっと広い場所へっ!....」
のりこは転がりながら、手近な部屋に近づいていった。しばらくして、レストルームの側まで来る。のりこは糸を交わしながら、飛び込む様にレストルームの中に転がり込む。ここなら通路より遥かに広いので、敵の攻撃を交わして技を繰り出すものやり易い。蜘蛛は、絶え間無く糸を噴き付けて来る。のりこはこれを交わしながら、少しずつ気を溜めて行く。そして.....
「ホワイト!気功砲!!」
気を溜めたところで気功砲を放つが、それでも蜘蛛には交わされてしまう。やはり避けながらなので、どうしても発射がワンテンポ遅れてしまう。
「だ....だめだわ!このままじゃ.....な...なんとかしなくっちゃっ!」
すると、蜘蛛の方も糸を噴くのを止める。このままでは埒が空かないと考えたのか、素早く移動したかと思うと、どこかに隠れたのか姿を消してしまう。
「.......何処かから、不意打ちをするつもりね?.....ようし、それなら.......」
のりこはその場に立ち上がり、目を閉じて耳を済ませる。わずかな物音も聞き逃さないためだ。そうしながら、右手にだけわずかに気を溜めていた。小さな蜘蛛だから、派手な気を放つ必要は無い。当りさえすれば、ほんのわずかな気でも充分である。蜘蛛はのりこに糸を噴く際、わずかでも壁を這って姿を現す。その音を聞き分け、すかさずその位置に気功を放てば倒せる筈だ。そう考えて、のりこはじっと待った。
「?!」
その時、わずかに糸を噴出す音が聞こえた。が、糸はのりこに向かって放たれてはいない。目を開けて辺りを見回すが、蜘蛛の姿は何処にも無かった。単に威嚇しただけなのか?のりこは再び目を閉じる。すると.......
「?!!」
今度は、確実に壁を這う音が聞こえた。何と、大胆にも敵は自分の真正面だ。
「たあっ!!」
のりこは目を開き、右手を前方に差し出しながらとっさに右へ飛ぶ。